カントリー・レビュー(5)


◇2002年マイ・ベスト・カントリー・アルバム   


◇カントリー・ミュージックを聴き始めてようやく1年数ヶ月がたった当方としては、一発でカントリーに魅了された2001年が目の眩むような豊作の年と見えたのは当然かもしれませんが、それに比べるとずば抜けたアルバムがあった割には、2002年は全般的には低調な年だったように感じられました。しかしそれも雑誌"Country Music"等で高い評価を得ているマイナー・レーベルのアルバムがなかなか入手出来ないという状況の中での印象ですから、かなり怪しいものではありますが・・・。ともかく「2002年カントリー・アルバム・マイ・ベスト10」は以下のようになります。

1位 KIM RICHEY "RISE" (LOST HIGHWAY) ★★★★★
2位 DIXIE CHICKS "HOME" (OPEN WIDE) ★★★★★
3位 ALLISON MOORER "MISS FORTUNE" (UNIVERSAL SOUTH) ★★★★★
4位 TIFT MERITT "BRAMBLE ROSE" (LOST HIGHWAY) ★★★★☆
5位 HANK WILLIAMS III "LOVESICK BROKE & DRIFTIN'" (CURB) ★★★★☆
6位 DOLLY PARTON "HALOS & HORNS" (SUGAR HILL) ★★★★☆
7位 RHETT AKINS "FRIDAY NIGHT IN DIXIE" (AUDIUM) ★★★★☆
8位 TOBY KEITH "UNLEASHED" (DREAMWORKS) ★★★★☆
9位 DARRYL WORLEY "I MISS MY FRIEND" (SKG) ★★★★
10位 STEVE EARL "SIDETRACKS" (E-SQUARED) ★★★★

◇2001年が「ベスト10」では足りず、「ベスト10+5」にしてもまだ足りず、涙をのんで落とさざるをえなかったアルバムが更に10枚以上もあったのに比べるとえらい違いという感があります。2002年の場合は、10位以下ではMiya Ishida(石田美也)"Himawari" (City Lights), Laura Minor "Salesman's Girl" (Hightone), Lane Brody "Pieces Of Life (Navarre), Roger Wallace "The Lowdown" (Texias Music Group), Kelly Willis "Easy" (Rykodisc), Elizabeth Cook "Hey Y'All" (Warner), Buddy Miller "Midnight And Lonesome" (Hightone), Steve Earl "Jerusalem" (E-Squared)あたりを挙げておけば充分かなというぐらいのところです。ちと淋しいです。

◇とは言え、2002年のベスト3の三枚はもの凄い。いずれ劣らぬ歴史的な超名盤で、はっきり言ってまだ順位を決めかねているほどです。というか、日によってAllison Moorerが1位になったり、Dixie Chicksが1位に思えたりという状態で、上の順位は依然として暫定的なものです。思い切ってKim Richeyを1位にしたのは、彼女の95年のファースト"Kim Richey"を聴かない日はないという状態がまだ続いておりまして、これまでの「実績」(とは言ってもまだサードが入手出来ていない)と次作への期待を込めてのことです。しかも、Kim Richeyの"Rise"が傑作であることは確かだとしても、それがどういうアルバムであるのかまだ語れないでおります。

◇Kim Richeyについては「カントリー・レビュー(4)」でその時点で理解したと思えたことを書いておりますので、関心がおありの方は是非参照していただきたく存じますが、結局決定的なことはまだ理解出来ないでおります。ファーストについてだったらまだいくらでも言えることがありそうな気がしておりますが、ではその路線で続けて欲しいと思っているのかと言えば、もちろんそうではなくて(ブランショの言う「何であれ持続に加担してはならない」は真実であると思う故)、ユーミン(松任谷由実)で言えば荒井由実時代の音楽を一枚のアルバムに凝縮させたようなこのファーストのあとでKim Richeyがやろうとしていることがまだほとんど言語化出来ない。しかしながらKim Richeyのこの「無意識」の大きさはやはり凄いと言わざるをえません。

◇Shelby Lynneの妹であるAllison Moorerの「無意識」も凄いと思いますが、この人の場合は<あらかじめ失われた愛>というようなテーマがその音楽の根底にあるらしいことが分かります。だからAllisonはユーミンや1980年前後の全盛時代の中島みゆきの音楽から類推出来るようなところもあるし、しかもAllisonはその<救われなさ>への固執において、60年代のボブ・ディランやPPMに匹敵するような画期的な「音楽空間」を拓くことが出来たと考えられる(「今月の一枚」もご参照下さい)。Dixie Chicksについては「カントリー・レビュー(3)」「J-POPレビュー(3)」で述べたことにつけ加えることはいまのところありません。つまりDixie Chicksの"Home"の音楽こそいまのカントリー・ミュージック王道だということです。しかも「光るもの」(松任谷正隆)を湛えた奇跡的な音楽。

◇Kim Richeyのようなポップ・ミュージシャンは60年代にはいくらでもいたような気がしておりますが、しかしそういうことが分かるようになったのは最近のことなのですから、いまその音楽が理解出来ないというのは彼女の「偉大さ」の証しなんだろうと思う。機会があったらまた彼女の音楽について考えてみようと思います。最後にひとつつけ加えますと、Faith HillとLeAnn Limesの売れ線ものはやっぱしつまんなかった。だからTim McGrawはもう買う気が起きない(2001年のGarth Brooksはよかったですけどね)。ともかく、2003年のカントリー・ミュージックに期待したいものです。

【2003/01/12 CR生】
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